WARO KISHI + K.ASSOCIATES ARCHITECTS

紙屋HOUSEKamiya House

竣工
2009.01
所在地
東京都渋谷区
写真
上田 宏

東京、都心の商業エリア、約50坪の敷地に建つ7階建の建築である。2階がクリニック、3階から5階が各階1フラットの住戸、6、7階がメゾネットの住戸という構成で、一般的に呼ぶなら「集合住宅」ということになるのだが、本当にそうなのだろうか、と思う。
ここで考えたのは50から70坪くらいの敷地、それも容積率が400、といった大都市都心の商業エリアに典型的な敷地に建つ、いわゆる「小規模ビル」として、将来的な用途変更にも対応可能なフレキシビリティを持つ形式をケーススタディし、そのプロトタイプを提案したい、ということだった。
結果として、各階1ユニットでそれぞれに個別の屋外テラスを持つフラットと最上階のメゾネット住戸の積層、言い換えると「オープンプランの住戸平面の積層」、それも集合住宅としては1階のアプローチと階段、エレベーター以外には共有空間を持たない形態を提案した。

オープンプランの形式と既存の都市との関係、都市の中でのプライバシーの確保と都市空間への開放度の問題についてまとめたい。
各階の平面は東側と南側には床から天井までの大きな開口部を持っており、この2つの開口部がオープンプランを担保しながら、同時に都市との関係を創り出す。東側については、開口部から離れた隣地境界に立つ自立壁と南北両側に抜ける屋外テラスが解放/閉鎖の対立関係を調整する。
またファサードに関しては意図的に床から天井までのガラス開口部で開放的なファサードとし、個人の空間と都市が共有空間を会して出会うのではなく、直接面する形式を提案した。それはこれまで「日本橋の家」、「中京の家」など、プライベートな空間が都市に直接接する提案を重ねてきた訳だが、そうした経験の延長上に、確信的にこのファサードも在るからである。
都市の建築で提案可能なこと、年月が過ぎて行く中で変化しないのは結局都市空間とのインターフェイスの提案だけだと一連の都市住宅の設計作業の中で確信してきた。この「集合住宅」もそんな提案のひとつである。