WARO KISHI + K.ASSOCIATES ARCHITECTS

書院 / PenthouseZen Lounge II

竣工
2009.05
所在地
西日本
写真
鈴木 久雄

曹洞宗の寺院、その最上階を「書院」としか呼びようが無い空間に改装するというプロジェクトである。この寺院が曹洞宗の寺院としては極めて重要な法要、それも半世紀に一度といった重要な法要を催すことになったことを契機に、その法要時には本山からの賓客のための控えの間として使い、それが終了した後にはご住職の書斎となるべく計画されたものである。
1988年に竣工した鉄筋コンクリート造の建物、大きな屋根と立派な構えの和風の寺院建築の最上階、本堂の斜め上に位置する屋根裏の空間を、下階に拡がる寺院の空間との親密さを持っていながらも、21世紀に改装された現代的な空間というのが与えられたプログラムだった。
最初に現場を見ると屋根裏の空間として約90m2、しかしその外にはほぼ同面積、約80m2の平屋根が広がっていた。その平屋根部分を庭園化すれば、そこには外部のどこからも見えない、ただこの「書院」のためだけに設えられた庭を造ることが出来る。ならば、その庭をどのように見るのかという視点だけを考えながら、内部空間は設計すればいいだろう、法要が終わって控えの間に戻るとそこにはあるはずの無い庭園と書院が現れる、ここから先は自分への独り言だったのだが、本堂の屋根裏に浄土の風景が在ると考えればどうだろうか、というのが最初の意図だった。
改装の設計には制限が多い。平屋根部分を庭園化することと言うのは簡単だが、屋根としての積載荷重しか見ていない部分を庭園化するためにはその重量が常に問題になる。ここでの主要な素材は、水、植物、ウッドデッキだがそれぞれのスペックはすべてその重量で決定されたと言っていい。
また書院の内部空間については下階との関係で決定した。線材を主体にした和風の下階に対して、面材を使った構成とすること、しかし下階がそうであるように、この屋根裏空間もオーセンティックな素材を使用することをルールとした。床の名栗、壁・天井の基本仕上げとしてのしっくい塗、床の機能のために吊り下げられた黒錆鉄板の壁、ヴェネチアン・スタッコ塗の天井パネルなどは、そうした意図で選んだものである。