WARO KISHI + K.ASSOCIATES ARCHITECTS

麻布十番プロジェクトAzabu Juban Project

竣工
2008.03
所在地
東京
写真
上田 宏

東京の麻布十番、交通量の多い表通りから少し入った場所に建つ地上8階、地下1階の商業ビルである。飲食を主体としたテナントの入るビルで、日本料理を始めとする飲食店やスパがテナントとして想定されている。ビル全体のコンセプトは「現代の和」であり、それを表現する建築にして欲しい、というのがクライアントからの要望だった。

1階が濃い色に発色した鉄板仕上げ、2階は木製ルーバー、3階から5階までがブロンズ色のカラーガラスの水平連続窓の前面にドット・プリントされた透明ガラスが重ねられたもの、5階から8階まではセットバックしながら各階にテラスのある透明な開口部の階、というように変化する。
全体を半透明で奥行きのあるファサードとすること、しかし同時に、階が上がるにつれて透明度の上がるファサード構成としたい、というのがファサードの基本的な考え方であり、その「半透明性」と階によって仕上げを変えることによる「ヒューマン・スケール」が、8階建てのビルのファサード全体に、都市に対する表情を与えるのではないか、と考えた。

地上階には、左右と中央の3つのアプローチがある。それぞれの雰囲気を変え、しかもそれぞれ可能な限り長く、それに狭いアプローチとすることで、日本建築の持つ特性の一つである「奥行のある空間」を現代の建築に生かそうと考えた。ヒューマン・スケールで半透明なファサード、それに目的の場所にたどり着くための長いアプローチ、という形で日本の伝統的な空間性を現代の空間に再現しようと考えた結果が、このプロジェクトである。