この住宅は埼玉県深谷市に位置する。大都市である東京の近郊、しかも北関東エリアに典型的な、都市郊外と呼ぶにはあまりにも茫漠とした風景が拡がる場所である。そこに外部に対しては閉じた表情を持ち、内部にコートを持つ形式の住宅を提案した。
閉じた形態としたのはこの地域の風景にどこか即物的な、「住宅」という言葉の持つイメージからは距離がある雰囲気を感じたからであり、そうした外部からは閉じた、しかし同時に内部に対してはオープンな空間を持つ建築こそがこの場所には求められていると感じたからである。 全体は東西9.6m、南北23.4mの矩形の平面であり、2層ある南側にはガレージと個室等のプライベートなエリアを、それとレベルが半階ずれた北側には大きな一室空間である天井高4.5mのリビング・ダイニング・エリアを配し、そしてそれらの中央にはプールのあるコートがある、という3分割平面となっている。コートは半階ずれた北側と南側のエリアをつなぎながら同時に分離する役割を担い、またリビング・ダイニング・エリアと一体となるよう計画することで外部のリビング・ルームとしての機能も持っている。
さながら工場のような素材を、徹頭徹尾即物的なディテールを用いることで建築へと仕立ててゆくこと。それは一見逆説的に聞こえるかもしれないが、人間にやさしい素材に満ちた空間とするよりも、むしろこの場所の周辺に見慣れた素材や構法を積極的に採用すること、そうすることでしかこの即物的な風景とは対抗し得ないのではないか、と考えている。