WARO KISHI + K.ASSOCIATES ARCHITECTS

博多の家House in Hakata

竣工
2008.02
所在地
福岡県福岡市
写真
上田 宏

福岡市都心部の住宅地に建つ住宅である。間口が狭く奥行きのある敷地で隣地境界には三方向とも建物が近距離で接して建つ。唯一風景が開ける南側の前面道路向かいには、低層の公共建築が建つ。
敷地北西隅に3層吹き抜けた中庭を持つL字型平面の建築にとっては、道路を隔てた正面向かい側の公共建築の緑を借景することと北西隅の中庭だけがこの建築に許された自然ということになる。

前面道路に面して配置された2階のリビング・ルームは開口部外側に設けた木製ルーバー越しに向かい側の自然と拡がりを借景する。開口部をカバーする水平ルーバーは、道路からの視線を遮る役目と水平方向の視線の拡がりを確保するという、二つの矛盾する機能を満たすものとして採用したものだ。

地上階から3階までを繋ぐ中庭は一階では和室のための坪庭であると同時に、2階ではダイニングルームに設けたガラス壁越しに風景の主役となる。地上階では和風庭園、2階では現代的な表情という2つの顔を持つ要素として、「竹」を採用した。3層吹き抜ける中庭の、その垂直性をさらに強調する要素でもあることは言うまでもない。

高密度な地域に建つ都市住宅でもあり、3階から下の階ではどちらかといえば閉じた、内向的な空間でこの住宅は出来ている。しかしペントハウスとして考えた最上階では様相はまったく違う。機能的には子供室と書斎であるこのペントハウスは、外部に対して無防備なほど開放的であり、3階以下の閉じた空間とは対照的に開放的な屋上階、すなわち屋上庭園として計画している。
「中庭」と「屋上庭園」。都市住宅を成立させるための手段としてのこの2つの外部空間、それを合わせて持つ都市住宅である。