WARO KISHI + K.ASSOCIATES ARCHITECTS

京都東急ホテル7階・8階改装Kyoto Tokyu Hotel 7F&8F Room Renovation

竣工
2007.10
所在地
京都市下京区
写真
市川 靖史

京都東急ホテルの7・8階、デラックスフロアの改装である。
近代建築史では20世紀は「住宅の時代」と呼ばれるが、人々がこれほど移動する機会の増えた現代においては、ホテルこそが現代人にとっての「第二の住宅」であり、住宅と同じように人間にとって重要なビルディングタイプだ、と考えてきた。建築家という仕事柄、日常的にホテルに宿泊していることもあり、設計に携われるチャンスを待っていたと言ってもいい。
それは日本のホテルのさながら昼間のように明るい照明や「白い」クロスの壁面、狭い室内に人の導線を邪魔するように置かれた家具、壁面にかけられたフェイクの絵画、といったもの全てに辟易としていたからだ。
ここでの提案はすべてそれらの対極にある。
照明は少々暗く、「家具が置かれた室内」ではなく、全ての必要な機能がビルトインされた壁面、さらにその壁面には京都に拠点を置き世界中の現代美術界で活躍している染織作家の、小さいながらも本物のアートピースが埋め込まれる。
さらに、ゲストを最初に迎えることになるエレベーターホールには目線から外れた低い位置に、密やかに季節の花々が飾られることになる。

京都を訪れるゲストは、このホテルで初めて「京都」と出会う。本願寺や清水寺よりも先に出会う「京都」ということだ。そんな場所こそ現代の京都そのものであるべきだ、というのが我々の提案だが、それが本当に実現できているかどうかは、これからのゲストの評価に委ねられることになるだろう。