この住宅は大阪市郊外、茫漠と繋がる私鉄沿線の風景の中、駅前商店街の喧噪を少し通り過ぎた場所に建つ。周囲をマンションに囲まれ、南側に建つ住宅側と前面道路側にのみ開いているという、大都市郊外の典型的ともいえる街並みだといえるだろう。間口3.6m x 2スパン、奥行3.4m x 3スパンの主構造の道路側に階段・テラス分1スパンを持ち、建物の後の1スパン分を中庭とする形式としているが、その中庭は階が上がるに従い唯一許された南方向へと開いてゆき、最上階では天井高が4.0mあるリビング・ダイニング・ルームの屋根を部分的に半透明な素材とすることで、中庭から室内へ、外部から内部へ、という空間の遷移が主役となるように、それも徐々に変化していくよう計画した。主階のレベルは地上面からほんの数m上がっているに過ぎないが、しかし、そのほんの僅かの差異が、閉じていながら同時に都市に対してオープンでもあるような空間の有り様を見せてくれるのではないか、と期待している。