WARO KISHI + K.ASSOCIATES ARCHITECTS

Office headquarters project, Yentai, ChinaOffice headquarters project, Yentai, China

設計
2009.11
所在地
中国

海洋開発やその研究を主体とした企業のための新しい本社としての複合施設の提案である。場所は中国・煙台の郊外、新しく開発されたリサーチパークの中の敷地であり、南、西側には道路越しに別の企業研究所に面し、東側は森の緑、北方向遠くに黄海を望むような場所である。
敷地は15.4万m2、そこに要求された機能は6つの建物、すなわち本社棟、研究棟、展示棟、ホテル/会議/レシデンス棟、食堂棟、体育館に加えて、400mのトラックやテニスコートを持つという、滞在型としても対応出来るような研究開発施設であり、全体工期を2期に分け、今回は研究棟、食堂棟、展示棟の第1期基本計画とそれを含む全体構想が求められた。
研究棟は敷地東に配置し、各階が約6,000m2、10階建てであり、1層分のオフィス面積としては一般的な上限を超えるほど大きく、mega officeに分類される。我々の提案は、そんな巨大なオフィスであるにもかかわらず、光や風といった自然が感じられる空間を作りたいというものであり、外壁をダブルスキンとし、そこに設けた半屋外空間をテラスや各階を繋ぐ階段とする。また中央には中庭をもうけ、オフィスの奥行きを30m以内とし、採光を両側から可能な奥行きとすることで、自然光がオフィスのどこに居ても感じられる。最上階はカフェ/レストランであり、オフィス最上階の熱環境の改善の為に水庭とした屋上面を視覚的にも活用する。レストランからは水庭越しの遠くに黄海が広がることになる。
食堂棟はこの企業を象徴する場所である「海洋」に乗り出す船舶のイメージであり、水庭の中、帆船を思わせるテント屋根とし、廻りの水庭を見ながら、屋根面からはテントを透過した柔らかな光が降り注ぐ。
展示棟はこの企業の過去の製品を展示する場所であり、将来的には一般公開される建物でもある。過去は忘れ去るものではなく、きちんと保存して展示したい、という企業の想いに答え、この展示棟は薄くスライスした翡翠を外壁材として採用し、それを透過した光の中でこの企業の過去と出会う。翡翠の「宝石箱」というのが、この展示棟の主題である。

我々が一日の大半を過ごすのは、オフィスの空間、仕事のための空間である。
ただ機能的で面積が確保された場所があればそれがオフィスだ、というものではないと考える。特に今回の計画のような複合オフィスであれば、それぞれの建物、様々な場所に「物語」が必要なのではないか、すなわち、「自然に開いた執務研究空間」、「帆船のような食堂」、「過去の仕事を納めてある宝石箱」、といった物語こそ、こうした複合的な機能を持つオフィスには求められていると考える。