このプロジェクトは京都府園部町に計画したオフィス・ビルである。古い歴史を持つこの町の中心部はどこかノスタルジックなたたずまいを感じさせるが、そうした町の中心部から15分も歩けば田畑の中に農家が点在するという、日本の典型的な田園風景へと変化してしまう。この敷地はそうした町の周辺部、風景が田園へと切り換わろうとする辺りに位置している。こうした周辺環境と都市的文脈との関係をどう読み取るのか、具体的に言うと、この敷地を取り囲む豊かな自然と、同時にそれを侵食しつつある開発の波、といった状況に対する解答を求められていた。だから敷地内外の空間的な連続性や建築の内部空間と外部空間の関係をどのようにつくり上げるのかが鍵だと考えた。この建物は地下1階地上2階建であり、1階にある天井高7.3mのオフィスがその大部分を占めている。前面道路に平行しておかれたメインのヴォリュ−厶の南北面は両面ともガラス面とし、これに直交する南北軸を設定する。動線は基本的にこの軸に従いながら時に平行に、時に直交しながら完全にオ−プンな外部空間、それも自然そのものが主役であるものから半ば閉じた空間へ、さらに建物の内部空間へとつながり、シ−ンの連鎖をつくり上げてゆく。それは町の中心から周辺部へと変化する風景の連続を、敷地内部までシ−ンの連鎖という形で持ち込むことであり、そうすることで「建築」と「都市・環境」との接続を図ったのだ。