WARO KISHI + K.ASSOCIATES ARCHITECTS

熊野古道情報センターKumano forest information center project

設計
2003.12
所在地
三重県尾鷲市

森林の自然保護を主題とする情報センターの設計競技への応募案である。
かつてSan Franciscoの北にあるMuir woodsの原生林を訪ねたことがある。そのとき知ったのは森の中に人間が入ること、そのこと自体が自然を破壊していくという事実だった。人が森に分け入ること、それは森に新しい光や風を導入することを意味する。その事が森の生態系を変化させ、自然を破壊する。我々が当たり前に自然の一部だと考えている光や風は、原生林の自然にとってはそれを破壊する武器となるということ。僕にとっては衝撃的だったその事実が、自然というものが一意的に定義できるものではないということを僕に痛感させた。
ここではそんな原生林の自然のリアルな現実と意味、在り方を体感できるような空間としたいと考えた。
もっとも「森」と人間との接触面が小さくなる形態。それは一本の「道」だろう。けっして「広場や「中庭」といった、太陽が溢れ風の通り抜ける屋外空間ではないのだ。
そんな、「森」と「道」の建築をここでは提案する。
その中に提案する建築は我々がよく知っている、柱と屋根といった形式は採らない。敷地近くで伐採された樹から加工された角材が無造作に積み重ねられ、そのなかに「道」としての内部空間が穿たれる、そんな建築になる。内部には木を積み重ねた構造体の中を抜けてきた光だけが、遠くからやってくる。この建築を体感することがそのまま森を歩くことの想い出となるようなものとしたい、森に関する情報センターの果たすべき機能とはその事に尽きるのではないか、と考えていた。