WARO KISHI + K.ASSOCIATES ARCHITECTS

KIM HOUSE 2011KIM HOUSE 2011

竣工
2011.11
所在地
大阪市生野区
写真
小川 重雄

1987年、大阪の下町、戦前からの棟割り長屋が立ち並び、工場や倉庫が点在している地域に小さな住宅を設計した。長屋の一軒を切り取り、そこに間口2.58m 1スパン、奥行方向5.4m 3スパンの二層分の鉄骨造を挿入し、中央を中庭とする。一階の床は内外共白いタイル貼とし、サッシュをフル・オープンにすれば、屋内外が一体となったスペースとして使うことができる。
この住宅では可能なかぎり工場製作の比重を高め、現場での作業を少なくする工法を考えた。工場製作されたH型鋼の日の字型フレームを4個、奥行方向に等間隔に並べた後、一階床と地中梁のコンクリートを一度に打設することで架構は出来上がる。その後工業製品である成型セメント板やアルミ・サッシュをカーテン・ウォール状に取り付けた。
2011年、24年ぶりにその改装を依頼される。1987年に夫婦2人+子供3人+祖母の合計6人の住まいとして設計したものを、夫婦2人のための住宅へ改装する計画である。子供達は既に独立し、家族像は変化している。
24年ぶりに現場を訪れて一番びっくりしたのは、両隣の住宅が当時のままだったことである。24年間の経済状況の変化は凄まじかったが、この地域そのものにはほとんど変化がない。
2011年の改装の主題はそんな都市との関係をあらためて見直すことであった。1987年時点では都市に閉じたファサードとしたが、もはやそんなに防御的になる必要も無いと考え、逆に都市に開いた表情を採用した。さらに中庭からの光と風の取り入れ方も2011年という時代の気分を反映した形とする。24年の年月の流れの中で変化した事と変化しなかった事、自分自身の変化も含めて、最も意識的になったのはそのことである。