京都市上京区、御所の西に広がる住宅地域に計画した、夫婦二人+子供二人の4人の家族のための住宅である。子供たちが小さいこともあり、家族全体の気配がどこにいても感じられるように、大きな一室空間でありながらもそれぞれの単位空間が独立しているという構成を73m2の敷地に成立させようと考え、敷地北西隅に東西に長く薄い中庭を持ち、残ったL字型の内部空間の中央に階段を配置し、立体的には全体がスプリット・レベルとなるような平面/断面形式とした。
一方、この場所は京都特有の景観規制が掛けられている地域であり、ファサードや屋根形状などの外部には内部空間の有り様を素直に反映させることは許されない。各階に求められる軒ひさしや3階ファサード壁面の90cmセットバック、平入を求められる屋根形状、制限される色彩と仕上げ材、といった景観上のルールに従う外部と、部分的に分節されながらも大きな白い一室空間である内部がその境界面で矛盾なく出会うこと、というのが設計の大きな課題だった。
都市住宅、特に京都のような歴史都市に建つ都市住宅は、たとえそれが間口4m少々しかない住宅であっても、都市景観上大きな意味を持つということを再認識させられたプロジェクトだった。