WARO KISHI + K.ASSOCIATES ARCHITECTS

AQUA CUBEAQUA CUBE

設計
2004.05
写真
Nacasa&Partners inc.

アクリルを素材とする家具のシリーズである。
誰でもアクリルという素材を想像すると、まずガラスよりも「透明な」素材だ、と考えるだろう。それに曲げ加工や接着が容易な素材でもある。このプロジェクトはアクリルという素材の魅力そのものを表現したい、と考えるところから始まった。
この家具は、可能な限り厚くしたほとんど塊のように見えるアクリル素材の裏面に塗装を施している。そうすると、素材全体としては不透明になるものの、表から見たときには厚いアクリルの奥に透けて見える抽象的な色の面が際立つことになる。つまりアクリルの表面に色が置かれているのではなく、むしろアクリルが色彩の面に施された厚く透明な仕上げ材であるかのように感じられてくる。フラットで不透明な色の存在が、逆にアクリルの透明感を強調するのではないか、と考えた。
その素材感だけを生かすために形態は単純な直方体形状を基本とし、脚部は可能な限り細い部材とすることでアクリルを空中に浮かせた。空中に浮遊する「透明な水」のような「直方体」、”AQUA CUBE”の名前はそこから付けた。
作ってみて判ったのだが、このアクリルはちょうど日本の漆のような艶やかさと奥深さを持つ。予想外の、うれしい誤算でもあるが、素材というものの持つ魅力と魔力を見せつけられた瞬間でもあった。