WARO KISHI + K.ASSOCIATES ARCHITECTS

南泉禅寺再建プロジェクトNanquan Temple Project

設計
2014.11

安徽省池州市南西の山林地区に1960年代まで南泉禅寺という禅宗寺院が存在した。歴史は唐代795年まで遡ることができる。この地では古来、農耕と黙想の一体化した修行が営まれていたという。本プロジェクトは当寺院再建のマスタープランである。我々は中国の村落や寺院において自然環境が多様に取り込まれていることに注目し、「小さな村落のような建築」というメインコンセプトのもと、4つのエリアを構想した。

第1の「本殿エリア」は南泉禅寺の名の由来である南泉が湧き出るとともに、大雄宝殿の遺構が発見された場所である。背後の山と大樹が形成する南北軸上に山門と本殿を配置した。本殿では、日本の唐招提寺に倣った寄棟の屋根など、本プロジェクトの中でもっとも格式の高い意匠を採用し、自然に比肩する建築を目指した。

第2の「禅院エリア」は座禅し、黙想する場所である。自然の風景と水盤への映り込みとのスペクタクルの前で、宗教心の有無に関係なく、訪問者は自己を見つめる機会をもつことだろう。ここでは、建築が背景に消えるよう、簡素な構造と意匠を採用した。

第3の「塔院エリア」は当寺院全体へのレセプションとして機能する。石塔(現存)と木造の仏舎利塔(日本の玉虫厨子を基に復元)とをアイストップとなる位置においた。伽藍の周縁では、敷地の起伏を利用して自然と建築との境界を曖昧にした。

第4の「ヒルサイドエリア」は前3者とは性格を異にする。この敷地は採石場跡地であり、剥き出しの岩肌が人間の無思慮な態度を象徴している。ここでは自然の治癒が求められている。その一例として、自然との対峙を徹底的にデザインした建築と、時間をかけて自然と付き合う行為である植樹を提案した。