
北方向に延びる狭い路地の先、さらに細く旗竿状に伸びる敷地の終わりに東西に長い長方形の敷地がある。接道する細い路地状の部分を除けば、敷地の4方向が隣地に囲まれている約100㎡で東西に長い長方形の敷地。しかも四周の隣地から1.5mのセットバックが求められている。残された敷地にはなんとか2階建てで60㎡程度の床面積が確保できることがわかった。東西に長い矩形の直方体で60㎡程度の住宅で何が可能か。
その時に唐突に思い出したのがル・コルビュジェの”Une Petite Maison”、「小さな家」だった。
これもほぼ60㎡の直方体。ならばそのレマン湖に向いた「水平連続窓」の翻案は出来ないか。
私たちの「小さな家」はレマン湖には向いていないが、水平連続開口はつくることができる。ここでは水平連続窓を「風景を見るための開口」と「太陽光を受け入れるための開口」に分けて考えることにした。
1階の水平連続開口は風景を見るための開口と考え、北側に南からの光を受ける風景、それも一番奥の壁手前に「とくさ」を植えてレマン湖ではないものの水辺を想起させる景色をつくり、そこに内部空間をつなげる。さらにその水平連続開口を北側だけでなく東と西へと廻りこませること。
一方、2層吹き抜けた北側の内壁には上部に東西幅のスカイライトを設け、天空からの光を受ける。こちらは「太陽光を導入するための開口」。
二つ合わせると、そこに新しい「水平連続窓」が実現しないか。
もうひとつ、ル・コルビュジェの「小さな家」から学んだこと。サッシュと構造のリズムの関係。
私たちの「小さな家」では北面の壁を支持する柱のピッチは、当初計画では等間隔の柱列からはじまり、次に意匠的な恣意でAーBーAへと変化し、さらに屋根面の水平剛性確保のために柱と梁が追加されたことで規則的な柱列から不規則な構造形式へと変化した。この変化が最終的な建築の姿に不思議なノイズとなって残っているのだが、それがむしろこの建築の「建築性」を保証してくれている。
建築とは一体何なんだろうか。私たちの「小さな家」は「開口」と「構造」を主題にそれを考えてみたケーススタディだった。