WARO KISHI + K.ASSOCIATES ARCHITECTS

湯の香橋Yunokabashi Bridge

竣工
1991.04
所在地
熊本県芦北町
写真
平井 広行

熊本県芦北町湯浦地区は古くは天草から船で訪れる人達で栄えた温泉町である。湯の香橋はその温泉町再興のシンボルとして、古くからあった赤い木造の太鼓橋に替って新しく掛られた。そしてこの橋は歩行者のためだけのものであるため、歩いて渡ることが純粋に楽しみとなるような、そんな橋が求められた。
それを実現するためにこの計画にはいくつかのポイントがある。一つは水面まで降りていくことができ、水を身近に感じられるようなテラスを設けること。つぎに手摺を半透明の素材とし、太陽の光の変化や橋を渡る人のシルエットがさながら障子越しに映ったかのように見える演出をする。三番目に夕暮れ時の散歩も楽しめるように、照明効果を最初から考慮しておくこと。最後に土木のスケールではなく人間のスケールで設計し、特に人の手に触れる手摺のディテールの精度を建築並みに確保すること。以上の四点に留意しながら設計を進めた。
そして橋が出来上がった現在、住民の人達の予想以上の反響に驚きながら、橋を考えることは人間について考えること、そしてそれが都市について考えることなのだという、当たり前の事実にやっと気付いたような気がする。